PROJECT
大阪・中之島に誕生した「シエリアタワー中之島」は、関電不動産開発が総力を結集した環境配慮型超高層タワーマンションである。関西電力グループのアイデンティティの象徴であるこの地に、いかにして前例なきランドマークを創り上げたのか。4人のメンバーが、それぞれの壁を乗り越え連携した軌跡を追う。
プロジェクトの舞台は、関西電力グループにとってアイデンティティの象徴とも言える特別な場所、中之島である。堂島川に面した広大な土地において、地上46階建て、総戸数364戸の「シエリアタワー中之島」を建設する壮大な計画が動き出した。関西電力の所有地を活用する本プロジェクトは、グループの知見を結集させた、まさに威信をかけたフラッグシップであった。
事業推進を担当する増井は、着工を控えた2021年からこの大任に就いた。「当社の開発力を世に示すランドマークにすることが至上命題でした。単に事業として成立させるだけでなく、中之島の風景を変え、街の価値を高める存在を目指したのです」と増井は語る。その言葉通り、企画段階からアール(曲線)デザインを取り入れた外観や、環境に配慮したZEH※の導入、さらには医療機関との連携など、最高峰にふさわしい機能を追求した。しかし、理想を形にする過程で高い壁が立ちはだかる。良いモノづくりを追求した結果、当初計画からの変更に加え、資材高騰の影響を受けて工事費が予算を大きく上回る事態に直面したのである。
一時は商品性のグレードダウンも検討されたが、増井は「ここで妥協しては、中之島に建てる意味がない」と信念を貫いた。彼は設計会社や建設会社の懐に飛び込み、連日のように協議を重ねた。コストを徹底的に精査する一方で、事業全体の収支構造を再構築し、フラッグシップとしての品質を維持したままプロジェクトを継続させる道筋を切り拓いたのである。この粘り強い調整が、後に市場から絶賛される圧倒的なクオリティの礎となった。
※ ZEH : ZEH(ZEH-M) Oriented基準以上の省エネルギー性能を有する水準を表します。
本マンションが10階程度まで建ち上がった頃、建築担当として樋口がチームに加わった。本物件は前任者からの引き継ぎであり、樋口には、企画陣や前任者が込めた想いを現場で具現化し、確実かつ丁寧にお客さまの手元へ届けるという重要な使命が託された。「前任者たちがこだわったアールを取り入れた象徴的な意匠や、ZEH補助金交付に向けた厳しい工程管理など、高いハードルが設定されていました。その熱い想いを途切れさせることなく継承し、形にしていく責任を感じていました」と樋口は語る。
超高層かつ大規模な物件を設計図通りに仕上げるには、緻密な工程管理と品質管理、多数の関係者との合意形成が不可欠である。特に樋口が直面した最大の課題は、364戸という膨大な数の竣工検査だった。通常と同じやり方では引渡し期限に間に合わないため、彼は2025年3月を起点とした約9ヶ月間に及ぶ超長期検査スケジュールの方針を定めた。一つひとつの住戸が完成するたびに順次検査を行い、手直しを即座に反映させる。この逆算の工程管理がプロジェクト完遂の生命線となった。
同時に、樋口が最も心を砕いたのが現場とのコミュニケーションである。「いいものをつくるためには、誰か一人が突っ走るのではなく、全員が同じゴールを見ている必要があります」と彼は語る。設計者、施工者、社内関係者との間に認識のズレが生じないよう窓口として奔走し、意匠性の高い細部の納まりについても徹底的に協議を重ねた。その結果、お披露目会での指摘事項も最小限に抑えられ、品質・完成度ともに高い水準を実現。想いを引き継ぎ、徹底した品質管理を貫いた樋口の努力が、顧客の高い満足へとつながったのである。
販売現場においても、かつてない挑戦が始まっていた。販売責任者の平田に課せられたミッションは、会社としても経験したことのない高額プロジェクトにおいて、中之島の魅力を最大限に伝え、選ばれる物件にすることであった。「本物件はグループの想いがこもったフラッグシップであり、絶対に成功させなければならないという強い使命感がありました。未経験の領域だからこそ、これまでの常識にとらわれない工夫が必要でした」と平田は語る。
平田はターゲットを明確にし、シエリアサロンでの演出や案内手法を一から見直した。どうすれば中之島の価値や、環境配慮型タワーとしての魅力を実感していただけるのか。スタッフへのヒアリングを重ね、細部にまでこだわったプロモーションを展開した。その試行錯誤の結果、販売開始とともに予想をはるかに上回る反響が寄せられ、高い評価を獲得することとなった。
その最前線で来場者と向き合ったのが、当時入社2年目の木原である。対面するのは経営者など、人生経験も知識も豊富な方々ばかり。「フラッグシップ物件だからこそ、プロとしての正確な回答と、物件の価値にふさわしいおもてなしが求められました」と木原は語る。資金計画の内容を精査し、海外顧客向けの資料を自ら作成するなど、徹底的な準備で不安を払拭していった。若手ならではの誠実さと、一人ひとりのライフプランに寄り添う親身な姿勢。木原が築いた信頼関係は、やがて「あなたから買いたい」という言葉に結実し、心から喜んでいただける販売現場を創り上げたのである。
2026年3月の引渡しを待たずして、「シエリアタワー中之島」は全364戸が完売という輝かしい成果を収めた。堂島川を眼下に見下ろす唯一無二のロケーション、夜の中之島を彩る屋上部のティアラのライティング、そして大阪中之島美術館と連携したアートサブスクリプション。この物件にしかない価値と魅力を追求し続けた結果が、市場からの圧倒的な支持となって返ってきたのである。
この壮大なプロジェクトを駆け抜けた4人の表情には、確かな充実感が漂っている。増井は「開発から販売まで、全員がフラッグシップという誇りを共有できたことが勝因です」と語り、難易度の高いプロジェクトを完遂させた自信をのぞかせる。販売のタクトを振った平田も、「変化の激しいマーケットの中で、お客さまにどう価値を届けるかを見極める力が養えました。お客さまに『本当にいい買い物をした』と言っていただけることが何よりの喜びです」と手応えを口にした。
若手として現場を支えた二人にとっても、この経験は大きな転換点となった。建築担当の樋口は「前任の想いを引き継ぎ、大勢の関係者と合意形成を図りながら品質を形にしていく醍醐味を知りました」と語り、現在はデジタルマーケティングの世界へ進んだ木原も「プレッシャーの中で、一流のお客さまの価値観に触れ、信頼を得られたことは、私のキャリアにおいて一生の財産です」と前を向く。中之島の空に凛としてそびえ立つ「シエリアタワー中之島」は、関電不動産開発の新たな象徴であると同時に、そこに情熱を注いだメンバーたちの成長と誇りの証として、これからも街を優しく照らし続ける。