PROJECT
(シエリアガーデン星田・シエリアシティ星田駅前)
ただ家を建てるだけではない、ただ街をつくるだけではない。関西電力グループの基盤を活かし、多種多様なアセットを取り扱いながら、関電不動産開発は総合不動産デベロッパーとしての新たな可能性を切り開き、“街育て”を推進していく。
「星田駅北土地区画整理事業」は、大阪都心に直結するJR片町線(学研都市線)星田駅前に位置し、住宅・オフィス・商業施設・医療施設・農地を含む複合開発である。関電不動産開発は、その住宅エリアにおいて、戸建開発「シエリアガーデン星田」計194 戸、マンション開発「シエリアシティ星田駅前」 2 棟(総戸数382 戸)を計画。すでに戸建、マンションともに分譲を開始している。
本プロジェクトのコンセプトは「SMART ECO TOWN(スマートエコタウン)」だ。二酸化炭素をはじめとする、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指し、高い省エネ性能と創エネ設備を備えたオール電化住宅で、ゼロカーボンタウンの創出に、関西電力グループの総力を結集し取り組んでいる。今回はその第一弾プロジェクトとなる。
スマートエコタウンでは、「①ゼロカーボン・②セキュリティ・③レジリエンス・④コミュニティ・⑤タウンスケープ・⑥ウェルネス」という6つの切り口で街づくりが進められる。たとえばレジリエンスでは、街の防災機能を高めることで、万が一の災害時も街全体で入居者の暮らしを支える。また、コミュニティについては、単に住宅を販売するだけでなく、さまざまな世代の入居者が気軽に交流できる施設やサービスを提供する。
関電不動産開発として新たに取組む内容も多く、各種契約書の作成や関係者との調整に苦労しながら、ほぼ手探り状態での事業推進となった。そして、検討から分譲開始まで7年もの期間を要する、長丁場のプロジェクトでもあった。
プロジェクトの発端は2016年。星田駅北土地区画整理事業の事業協力者であるゼネコンから、保留地購入についての打診を受けたところから始まる。具体的な依頼内容は、戸建保留地を一括で引受けてもらえないか、というものだった。そこから、マンション保留地と地権者の集約換地も併せて引受けることとなり、マンション382戸、戸建194区画のビッグプロジェクトへと発展していく。
保留地とは、土地区画整理事業において、地権者から提供された土地のうち、売却されて事業費に充てられる土地のことだ。星田駅北土地区画整理事業では約200名の地権者が存在し、彼らの所有する土地のほとんどが農地だった。荒れたままの農地を放置しておくよりは、マンション用地や戸建用地として有効活用する方が彼らにとっても望ましい形になると思われる。
また、換地とは、個々の従前地の条件を考慮しながら、より利用しやすくなるよう土地を再配置することである。今回の地権者は、先祖代々受け継いだ農地であっても、それを引継ぐ担い手がいないことから、ほとんどが宅地に変えて売却することを希望していた。結果的に、土地を一団の区域にまとめる集約換地の手法を用いて売却が行われた。
特に苦労したのは集約換地の地権者への説明だった、と用地担当の永田は当時を振り返る。事前に承諾は得ているため、土地を譲ってもらうことに関して説得を試みる必要はない。それでも、不動産取引の複雑なスキームを理解してもらう事は難航した。同じく用地担当の池下は、「何のことだか、意味がわからない!」と地権者のご指摘を受けることもあった。人は自分の理解できないことに恐怖心を抱く傾向が強い。だからこそ、彼は地権者に寄り添い、丁寧に対話を重ね、少しずつ理解を得ていったのであった。
無事、用地取得が完了し、プロジェクトは開発マネジメント部から住宅事業本部へと引継がれることになった。スマートエコタウン構想と6つの切り口での街づくりに関しては前述の通りだが、その詳細内容を一部紹介しておこう。
コミュニティ形成の場となる多機能な施設として、マンションには共用施設、戸建街区には共用棟がそれぞれ設置され、各オーナーは相互に利用することが出来るという特徴を持つ。マンションの共用施設はよく見るが、戸建街区の共用棟はあまり例がない。2階建の建物の1階部分にはオープンラウンジ、2階部分には多目的ルームと自習室がレイアウトされた。当然、“ハコ”を用意するだけでは意味がない。どのように運営していくかが課題だった。
すでに利用した入居者からは、「自習室はリモートワークに利用でき、とても助かっている」といった好意的な声が聞かれる。また、災害時に蓄電池として利用できるEV(電気自動車)の、平時におけるカーシェアサービスも、戸建街区での導入は珍しい。「子どもの手が離れたこともあって、自分で所有することは考えていないけど、まとめ買いの際などには車があると便利」と、こちらも好評だ。
エリアマネジメントは、関電不動産開発として今後注力していきたいポイントである。住宅事業本部 戸建事業推進部に所属する山城が、戸建団地管理組合法人とエリアマネジメント組織の運営サポートを務める。戸建住宅の入居者とマンションの入居者、さらにそこに換地住民も加わり、交流を促進するお祭りやワークショップなどのイベントが、一年を通して開催されることになる。これまで土地区画整理事業組合や交野市と地道に折衝を重ねてきた内海も運営に携わり、“街育て”に軸足を移す。そう、街はつくって終わりではなく、多くの人を巻き込みながら育てていくものなのだ。
戸建街区の販売は好調だ。立地の良さはもちろんのこと、統一感のある街並み(外構計画)や、ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。太陽光発電による電力創出・省エネルギー設備の導入・外皮の高断熱利用などにより、生活で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る住宅のこと)仕様による高い居住性、そして光熱費を抑えられる設備などが評価されている。事業性の検証と事業スキームの組み立てを担った武市も、その状況にひとまず安堵する。
とはいえ、“街育て”はまだまだ道半ばだ。販売担当の福田は常に入居者視点に立ち、入居者が心地良いと思う空間、便利だと感じるサービスを提供するために奔走する。彼もエリアマネジメント組織に加わっており、入居者と一緒に街を育てていくことができることに、この上ない喜びを感じている。
ただ家を建てるだけではない、ただ街をつくるだけではない。関西電力グループの基盤を活かし、多種多様なアセットを取扱いながら、関電不動産開発は総合不動産デベロッパーとしての新たな可能性を切り開いていく。そして、プロジェクトメンバー一人ひとりが各自のポジションで、使命感を抱き、それを推進していく。
スマートエコタウン構想については、すでに兵庫県宝塚市で第2弾が立ち上がっている。スマートエコタウン星田をフラッグシッププロジェクトに、その知見を反映させるため、これからもメンバーの挑戦は続く。